交渉力を高める

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 交渉についての関心が高まっております。それはなぜでしょうか。交渉は特別なものではないからです。日常行っていることを思い出してみると、次のことに気づくはずです。交渉することなしに生活することはできません。ビジネスの場に限らず、自分を取り巻くコミュニティや家族においても知らず知らずに交渉をしています。ところで多くの人にとって交渉は面倒でいやなことであり、できれば交渉を使わずに生活したいと考えている人はいるかもしれません。

 このように普段よく使っている交渉ですが、多くの誤解があります。その結果ストレスがたまってしまったりして苦手意識を持つ人は多くいます。誤解の第一は、交渉で大切なことは経験であり、経験を積まないと上達しないと考えることです。もちろん経験が重要であることを否定しませんが、もっと大切なものがあります。それはロジック(論理)です。このロジックは学習により身につけることができます。第二は、「交渉は出たとこ勝負である」と考えることです。まず交渉に参加しないと相手の出方はわからないし、準備したからといってその通りに話が進むはずがない、と考える人は多いです。しかし、実際に有効に使える事前準備のやり方があります。正しい事前準備を行えば、よい交渉ができます。第三は、「交渉は勝ち負けがはっきり決まる」と考えることです。そうではありません。よい交渉とは、双方の利益を最大化するものです。

 ロジック(論理)を活用して交渉を進めていくために、ぜひとも理解しておきたいことがあります。それは「人と問題を分離する」ことと「条件や立場にとらわれずに、お互いの利益に着目する」ことです。この基本を理解し効率的な事前準備の方法を学ぶと、交渉力は各段に向上します。この考え方のルーツはハーバード大学の故フィッシャー教授にあります。現在では多くの人によって更に発展しており、非常に有力な学問として定着しつつあります。この「交渉学」を学び、交渉力の向上に役立てていきます。「交渉学」では次の5つを主要なステップとして取り上げています。

    ①状況把握

    ②ミッション設定

    ③目標設定(ZOPA)

    ④創造的選択肢検討

      ⑤BATNA

ZOPAやBATNAという言葉は聞きなれないかもしれません。しかし、特に難しいことではありません。

 この考え方を理解すると、双方の要望をできるだけ満足させながら、時間が経過してもお互いの満足を維持する交渉を実行することが容易になります。もちろん従来から広く採用されている「交渉術」についても知ることは大切です。体系的な考え方とテクニックを上手に組み合わせて交渉力を高めていくことができます。